ダメ親のすすめ 第6回

第6回:子供が嫌がる事は楽しいゲームにしてしまいましょう

「子育てに必要なものは、愛と余裕。それとほんの少しの理解だ。」
by チャーリー・チャップリン

・・・ハイ、嘘ですね。この言葉はいま私が考えました。
育児狂時代のまっただ中を生きる親たちのための自己防衛ブログ「ダメ親のすすめ」、第6回目となる今回お送りするのはこの言葉です。

「子供が嫌がる事は楽しいゲームにしてしまいましょう」

これ、そこまでよく見かける言葉ではないので共感は得にくいかなぁと最初は思ってたんですが、試しにTwitterで少し言ってみたら思いのほか反響が大きかったので、この手のアドバイスって意外と普及しているんですね。

この言葉は多くの場合、第3回「子供に『早くしなさい』は禁句です」の所で述べた考え方とセットになって出てきます。子供はなるべく叱らず、否定的な事を言わず、急がせず無理やり強制せずに育てる方がよいとする考え方。
否定されると子供は自分が価値の無い存在だと思ってしまい、積極的に自分を表現しようとしなくなる。だからできるだけ子供は否定せず、強制せずに伸び伸びと育てよう、というのがこの説のポイントです。

ただ、第3回でもツッコミましたがこの説、言ってる事自体はたぶん正しいと思うので、私もぜひ自分の子供に試してみたいと思っているのですが、いかんせん具体的にどうすれば、叱らず否定的な事を言わず強制せずに育てられるかが全然分からないんですね。
で、結局は実行できず「あぁ、また耐え切れずに叱ってしまった。私はダメ親だ・・・」と親を追い込んでしまい、さらにストレスを積もらせてしまうという、完全な逆効果スパイラルになっていると私は思います。

それに対して、もう一歩具体的に踏み込んだ解決策として紹介されるのが、今回のテーマである「楽しいゲームにしてしまえ法」です。

例えば子供がお風呂に入りたくないと嫌がった時、「さっさとお風呂入りなさい!」と怒鳴りつけて抱えて風呂に叩き込むのではなく、「お父さんが愉快な『体洗いマン』に変身して、一緒に入ろう!と子供に呼びかける」とか「『服が早く脱げるかなゲーム』を始めて子供が喜んで服を脱ぐようにさせる」とか、「お風 呂で一緒に遊ぶおもちゃを使って興味を引く」とか。

そのように、子供にとって嫌な事を全て「遊び」に変えてしまうことで、強制して無理矢理やらせるのではなく、子供が自分の意志で嫌な事に進んで取り組んでいくように仕向けてみてはどうでしょうか?というのがこの方法の趣旨です。

・・・ハイ、ここまで読んで
「なるほど!いいじゃないかそれ!ぜひやってみようよ!」とか、
「これ、我が家はちゃんとやれてるよね!我が家は毎日がゲーム形式で、いつも叱らずに楽しくやってます」とか思った方は、子育てやった事ありませんね

「バカにするな!私もちゃんと子育て参加してるよ!」と思った方は、たぶんそれ都合の良いところだけつまみ食いして、参加した気になっているだけです。深く反省して下さい。きっと母親は怒っています。

というか怒りを通り越して、あなたのあまりの鈍感さに注意する気力も湧かず、全て諦めて何も言わないでいるだけです間違いなく。

えー。
「叱らずになるべく子供が楽しんでやるように仕向けよう」なんてのは、ドヤ顔で改めて本に書いて紹介するほどの事でもなく、おそらく世の母親の8割以上は何も言われなくても自然とそれを試みています。

子供が野菜を食べるのを嫌がったら、野菜の味が分からないよう料理の仕方を工夫する。
電車の中で子供が泣き出さないよう、ぐずった時に子供の気を紛らわすためのおもちゃを常に持ち歩く。
子供が「帰りたくない!」と駄々をこねても、抱きかかえて無理矢理連れ去るのは最終手段で、その前に「帰ったらおやつがあるから、早く帰って一緒に食べよう?」とか、あの手この手で子供が自分の意志で帰ろうとするよう仕向ける。

やってるんですよすでに。十分すぎるくらい。

だいたい、普通の感覚の人間だったら誰だって、怒鳴ったり、嫌がるのを強制はしたくないんです。怒るのってパワーがいるし、嫌がって泣き叫ぶ子供の顔を見ると自己嫌悪になるんです。あなただってそうでしょう?怒鳴るの好きですか?家族の泣き顔を見て気分がスッとしますか?しないでしょう?

あなたは街中で子供に対して声を荒らげている親を見た時、「あの親は子供に怒りをぶつけてストレス発散してる。あれじゃ子供がかわいそうだなぁ」なんて思ってませんか?

ストレス発散なわけないでしょう?
街中だぜ?大勢の人の前だぜ? 超恥ずかしいに決まってんだろ?
恥ずかしさと自己嫌悪で、余計ストレス溜まるに決まってんじゃん?
それでも我を忘れて怒りをぶつけてしまうくらい、全ッ然言うこと聞きゃしないんですよ子供なんて。

嫌な事を楽しいゲームに変換した瞬間、目をキラキラと輝かせて嘘のように素直に従いはじめる子供なんて、それは「非実在聖幼児」です。現実を見ていない人が「こうであったら美しいだろうなぁ・・・」という妄想と夢で作り上げたキモい偶像です。この世には存在しません。

・・・いや、それお前のやり方がマズいだけなんじゃないの?
お前の考えるゲームが面白くないから言う事を聞かないだけで、もっと工夫して面白いゲームを作り出せば、子供は興味を持つんじゃないの?と思われた方。それでは練習問題をやってみましょう。以下の問にお答えください。

【問】
私の息子は歯磨きが嫌いです。さて、そんな息子が自分から進んで歯磨きをするように仕向けるためには、どんな方法があるでしょうか?できるだけたくさんのアイデアを出してください。

【私の回答】

  • 息子も大好きでよく歌っている「歯みがきの歌」を一緒に歌って歯みがきの楽しさをアピール
  • 「お父さんも歯みがきするよ?さあ一緒にやろうぜ?」と言って、まず私が先に歯みがきを始める。
  • 「お父さんとどっちが大声出せるか競争だ!」と言って2人でアーッ!と絶叫し、口を開けている間に磨く。
  • くまのプーさんの指人形で歯ブラシを持って「ほらプーさんが歯みがきするよ」と親しく声をかける。
  • 「ひこにゃんも一緒に歯みがきしたいって!」とひこにゃんのぬいぐるみも横に置いて寸劇を始める。
  • イチゴ味とぶどう味とりんご味の3種類の歯みがき粉を用意して、毎回好きな方を選ぶ楽しみをつけ加える。
  • その3種類の歯みがき粉を使って「何の味でしょうかクイズ」をやる。
  • 「うわ!スゴイ!自分で歯みがきできるんだ!スゴ~イ!もっと見たい!」とひたすら褒めまくる。
  • 「ワハハハ!面白いね~!さぁ笑おうぜお前も!ワハハハ!」と笑わせて口を開けたところを磨く。
  • わきの下をくすぐって笑わせて、口が開いたところを磨く。
  • 「カバさんの物まねごっこ」を始めて、カバの真似して口を開いたところを磨く。
  • アンパンマンに出てくる「歯みがきマン」を見せて「さぁ歯みがきマンと一緒に歯を磨こう!」と誘う。
  • 短い時間でもきれいに磨けるように超音波歯ブラシを買う。
  • コップの水で口をゆすぐのは好きなので、「歯みがき終わったらコップでブクブクさせてあげる」と誘う。
  • 「お前も大人だもんな。歯みがきなんて楽勝だよね?」と敢えて突き放し、歯ブラシを渡して自分でやらせてみる。
  • 「お父さんとお母さん、どっちに歯みがきしてもらうのがいい?」という逃げ場のない2択を自分の意志で選ばせる。

ハイ、私はアイデアを16個出しました。
これを越える数の独創的な案を出した方だけ、私にご意見を下さい。それなら私も聴きたいです。

ちなみにこの16個は全て試しましたが目立った効果はありませんでした。

より正確に言うと、若干効く日と全く効かない日がありますが、効果は安定しません。少なくとも、目をキラキラ輝かせて毎日一緒に楽しく歯磨き、という状態には決してなりませんでした。その一方で、

「歯みがきしないと、虫歯菌マンが来て虫歯になっちゃうぞ~!」
は毎日確実に一定の効果を発揮します。

これを見て私は、人間とはなんと愚かな生物なんだろうと絶望しました。自分の健康には有益だけど大嫌いな歯みがき。これをどんなに前向きな言葉で熱心に誘っても息子はなかなか従いませんが、虫歯菌マンで脅しをかければ一発で言う事を聞くんです。

なぜ世の中から体罰が無くならないのか。なぜ仏教には優しい顔の仏様だけでなく、恐ろしい顔で睨み付ける不動明王様もいるのか。私は子育てを通じてその理由が何となく分かるような気がしました。

人間は本来、自分勝手で目先の快楽に引きずられる生き物なんです。無理矢理遊びの形に仕立ててごまかしても、やっぱり嫌な物は嫌で、本能的に避けようとするんです。それを100%毎回、前向きな言葉と優しい誘導、手厚いフォローで正しい方向に仕向けるのって、そもそも可能なんでしょうか?

現実問題として、脅しや強制で従わせる事も一部はやむを得ないのではないでしょうか?(もちろん体罰は論外、口調ややり方には十分に配慮した上で、安易に乱用しないという厳しい条件付きでです)

秋田の伝統行事に「なまはげ」ってありますが、あれなんて言ってしまえば、子供を脅迫して恐怖心を植え付け、大人の言う事に従わせるための行事ですよね。でもそんなに悪い印象は受けません。それ以外にも、「夜寝ない子の所にはオバケが来るぞ~」とか、私は普通に使ってしまうのですが、これだって立派な脅迫と強制ですよね。

正直、子供の教育にとって何が正しいのかなんて私には分かりませんし、たぶん誰にも分からない事です。

ただ一つ、私の個人的意見として確実に言えるのは「愛」「自由」「自発」一辺倒の否定しない子育てって、正直しんどい。
用法と用量は考える必要があるけど、時には「なまはげ」の力を借りたいです。そして私は、「なまはげ」が子供に悪影響を与えているとは、とても思えないんです。

次回予告:「知育

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