ダメ親のすすめ 第9回

第9回:3歳まではお母さんと一緒に(前編)

科学的根拠なぞ一切無視、ただ私が自分の目で見て直感で思った事を感じた通りに書き進めてきたこの「ダメ親のすすめ」も、とうとうこのテーマに手を出す事になりました。第9回となる今回扱うのは、あの悪名高き「3歳児神話」を象徴する、この言葉です。

「3歳まではお母さんと一緒に」

さあ、心してかかりましょう。こいつは闇が深いぜ!
今回は長くなるので前後編に分けます。

さて、この「3歳まではお母さんと一緒に」という言葉に象徴される「3歳児神話」、共働き家庭の方はおそらくほとんどの方が一度はその存在を意識された事があるのではないかと思います。
この「3歳児神話」とは、「子供が3歳になるまでは母親が子育てに専念しないと、子供の成長に悪影響を及ぼす」という説の事で、1年間の育休明けに子供を保育園に預けて職場復帰しようと考える共働き希望の母親の心に、冷たい短剣を突き付けてくるものです。

で、結論から先に言ってしまうと、この「3歳児神話」、1998年の厚生白書に「少なくとも合理的な根拠は認められない」と記載されています。
ただ、完全に否定されたわけではなく、「明確にそれを肯定する根拠も否定する根拠も見当たらない」、つまりイエスでもノーでもないというのが今の状態です。

なんだかモヤッとする結論で気持ち悪いですが、そりゃそうですよね。だって、人間の成長って複雑で、これをやればいい/これをやってはダメだなどと簡単に原因と結果が単純に一致するものじゃないし、根拠を探して白黒ハッキリつけるのって本当に難しいんです。

とはいえまぁ、ネット検索で色々見て回ったという程度の知見ですが、最近では3歳児神話を否定する意見の方が多くなっているみたいですね。より正確に言うと

「子供は3歳までに愛情を受けないと成長に悪影響がある」という点は3歳児神話と同じなんですが「愛情を与える相手が母親でなければならない」という点が否定されています。

愛情を注ぐのは別に母親でなくても、保育士さんでもいいし、父親でもおじいちゃんおばあちゃんでも、親戚の誰かでもいい。愛情さえ感じることができれば、誰でもいいんです。

しかし、多くの発達心理学者が、何千人もの子供達を対象に10年以上の地道な追跡調査を行ってやっと「3歳以前に他人に預けられた子供と母親が自ら育てた子供の発達に差はない」という結論を導き出しているというのに、この「3歳児神話」って妙に根強いですよね。

なぜ根強いかというと、「3歳児神話」って直感的に納得しやすいからなんです。

「母親の愛は尊い」これに異論はありません。
「子供と触れる時間は短いよりも長いに越した事はない」これも事実でしょう。

それが、この2つが組み合わさって「子供には、尊い母親の愛にできるだけ長く触れさせてあげたほうがいい」となると若干怪しくなってくる。「そうかな?確かにそうかもしれないけど、そうじゃない例外もあるんじゃないかな?」と疑問が浮かんできます。

で、そこからさらに発展して「3歳までは母親が一緒にいないと成長に悪影響が出る」になるともうかなり怪しい。「ちょ・・・ちょっと待って!それは行きすぎ!出発点から離れすぎてもうわけわかんなくなってるよ!」という気持ちになります。

でも、それは私がこうやって順序立てて徐々に論理がおかしくなっていく様を説明しているから気付くのであって、いきなり3歳児神話を聞かされて、このおかしさに気付く事は難しいです。

3歳児神話が厄介なのは、その根拠となる「母親の愛は尊い」と「子供と触れる時間は短いよりも長いに越した事はない」という2つのパーツの説得力がハンパ無い事であって、組み合わせはおかしいけどパーツ自体は正しいから感覚的には何となく腑に落ちやすいんです。

だから、信じやすい。
そこに、学者たちが莫大な労力を注いで積み上げた統計データなど関係ありません。
何となく腑に落ちるからきっと正しいんだろう。
深く関わりのない一般的な大多数の人の意見なんて、そんなもんです。

では、そんな「3歳児神話」の信者に対して私達は一体どう対処すればいいのでしょうか?
何となく腑に落ちるからきっと正しい、という人に対して客観的なデータで反論するのは確かにとても大事な事です。
でも、それは学者さんがやるべきこと。専門の学者さんですら明確な結論に至っていない事に対して我々が何か意見を述べても全然説得力はありません。

何となく腑に落ちるからきっと正しい、という感情的な判断に対してもっとも効果的なのは、こっちも感情的に反論することです。

じゃぁ、感情的に見て私が3歳児神話をどう思うかというと、
ゲロ吐くくらい大っっッ嫌いです。なぜかというと、

世界中に何百万人、何千万人と存在するはずの、3歳以前に母親を亡くした方々に対して失礼極まりない

からです。もし3歳児神話が事実だったとしたら、不幸にも3歳以前に事故や病気、あるいは離婚などで母親と接する事ができなかった方々は、そうでない人と比べてどこか欠けているものがあるのでしょうか?

あるわけねぇだろが馬鹿野郎。
そんなに人間やわじゃねえよ。
周囲が愛情を補ってあげて、みんなちゃんと大人になってるよ。

こんなの少し考えればすぐに気付く事なのに、意外と気付かないもんですね。
そして、自分の説が実は誰かを傷つけているという事に気付く事もできないような鈍感な人が主張する子育て理論、そんなもの信じる意味ありますか?

私は信じる意味はないと思います。

さぁ、てなわけで3歳児神話への宣戦布告は終えました。
その上で次回は、それでも残る「本当に3歳前に子供を預けてしまって大丈夫なの?」という不安に対して、2人の子供を1歳から保育園に預けてきた私が自分の目で感じた、自分の感想をご参考としてご説明したいと思います。

次回予告:「3歳まではお母さんと一緒に(後編)」

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*