ダメ親のすすめ 第4回

第4回:仕事も育児も頑張るママ

社会的に好ましい「良い親」なんてクソ食らえ!
意識低い系育児ブログ「ダメ親のすすめ」、第4回目となる今回取り上げるのはこの言葉、

「仕事も育児も頑張るママ」です。

・・・あれ?
でも、少子高齢化で将来の労働力不足が問題となっており、国の政策としても女性の社会参加が奨励されているという昨今、この「仕事も育児も頑張るママ」っ て、とても素晴らしい事ですよね確か?(棒読み)
社会の中で素敵に輝くこのような母親が増えていけば、日本の社会ってもっと良くなるんじゃなかったでしたっけ?(棒読み)

ハイ。
そうですねそりゃ。できればね。

保育所不足で子供を預ける事もままならず、子供が病気になっても休んだり遅刻したりしたら白い目で見られ、夫は多少手伝ってくれても所詮他人事で無責任。残業してる奴の方がより勤勉で頑張ってる・飲み会に参加しない奴は付き合いが悪い、という企業文化の中では、子供の面倒を見るために毎日必ず定時で帰る生活は圧倒的に不利。

・・・そんな八方ふさがりの状況で、どうやって輝けと?
無理だろ。
少なくとも俺が女性だったら無理だよ。

おや?でも、こんなどう考えても無理な要求でも、どうやら上手に工夫すれば十分こなせるらしいぞ?(棒読み)
ふむふむ、「仕事も育児もテキパキこなす時間術」とやらを駆使すれば誰でも可能であるらしい。(棒読み)
だって、ちゃんと仕事と育児を両立させて輝いている素敵なワーキングマザー達の実例が、雑誌やら新聞やらの記事でいくつも紹介されてるじゃないか!

なんだ、これと同じ事をやればいいだけの話だよ!
簡単だ!あなたにもできる!
だって、同じにんげんだもの!

・・・できるかボケェ!!!!!

この手のアホな育児&仕事系の記事は、日経関連の女性・育児系雑誌とかが特にひどいです。ホントひど過ぎて逆に笑えてくるくらいひどい。例えばコレ。

「仕事も子育ても充実!ハッピー★ワーキングママの共通点」

「日経WOMAN2月号では、3人の素敵なワーキングママを取材。まず驚いたのが、3人とも早起きであること! なかでも1歳の双子を育てる電機メーカーの経理職、Mさんは、毎日の起床時刻がなんと3時30分
「もともと独身時代から朝型で、5時台に起きていたのですが、出産後は4時半になり、最近は慣れたので1時間早くなって3時30分になりました」(Mさん)」

・・・オイ。
普通の人間が、毎朝3時30分起床の生活で幸せなはずあるかい!!
こんな事までして輝くくらいなら、俺は濁ってて結構!!
6時半まで寝る!!

もし真面目な女性の方で、こういうの読んで真に受けて「私も育児と仕事を両立できる素敵なママになりたい!」と憧れを抱いていたり、こういう記事みたいな 「ハッピー★ワーキングママ」になれない自分は努力不足・能力不足のダメな人間だなどと負い目を感じておられる方がいたら、悪いことは言わない、これは一種の宗教です。関わっていると都合よく食い物にされるだけなので、こういう風潮からは早めに距離を置きましょう。

冷静な話、正直、この手の陳腐なキャリアウーマン像ってもう旧世代の遺物だと思っているんですね私は。

戦後から80年代頃まで、働く女性の地位は今よりもずっと低いものでした。数も少なかった。そんな時代には、男だらけの共同体に果敢に飛びこんでいって、 男と同じ事をやって「女でも男に負けてないんだぞ!なめんな!」と身をもって証明することが、女性の地位向上のためにはどうしても必要な事でした。

そういう勇気ある有能な女性たちが、男社会の中でボロボロになりながら、自らを犠牲にして開けてくれた風穴を通って、女性の社会進出というものは少しずつ少しずつ拡大し、社会に定着してきました。

そして現在、女性が働くことは以前ほど珍しい事ではなくなってきています。まだまだ不十分ですが、最近はようやく、保育所を増やす、産休・育休制度を充実させる、といった育児サポート体制を充実させる事に社会の目が向くようになって来ました。これらの変化は全て、先人の女性達が積み上げてきてくれた尊い犠牲と努力のたまものです。

では、そんな変わりつつある状況の中で、昔のキャリアウーマンのような「仕事も育児も立派にこなす素敵な女性」の存在って、どんなもんでしょうか?

「あの女性はサポート無しで、全部自力で仕事も育児も立派にこなしてるじゃないか」

「それなのにお前はサポート無しでは働けないなどとぜいたくな事を言う。
それは努力不足じゃないのか?お前のやり方に問題があるんだろう?」

「子育てもろくにできてないのに働くなんて、親として無責任だ。」

悲しいかな、今や完全に逆効果になっちゃってるんですよ。
能力にも環境にも理解ある優しいダンナにも恵まれた、ごく一部の幸せな「ハッピー★ワーキングママ」の成功例が、世の中の大多数を占める「普通の女性」の社会進出のハードルを上げてしまっているんです。

しかも皮肉なのは、多くの真面目な女性たちが、その真面目さゆえに「私も育児と仕事をテキパキ両立しなきゃいけない!」と強迫観念に駆られて、歯を食いしばって「ハッピー★ワーキングママ」を目指してしまっているということ。

違うんだよ!もうそういう時代は終わったんだよ!
会社はもう「輝いている特別な自分を表現する舞台」なんかじゃない!
「ごく普通にそこにある、当たり前の日常」なんだよ!
これからは、ごく普通の人が、何の努力もなしにごく普通にこなせるような仕組みに変えていかないといけないんだよ!

日本の女性の社会進出は、欧米などと比べたらまだまだ遅れているかもしれませんが、ようやく第一段階は終わって「特別な人だけが参加できる特別なもの」から「ごく普通にあるもの」に変わりつつあると思います。
だからこれからは「特別な人になろう」と自分を高める努力じゃなくて、「普通の人が普通の状態でこなせるようにしよう」と社会に呼びかけて周囲の意識を変えていく努力の方が、真に女性の社会進出を拡大していく事につながると私は考えています。つまり、

誇りをもって「ダメ親」を貫く方が、実は社会のためになるんです。

私は普通の人間だから、できないものはできない!
できない自分に問題があるのではなくて、それが当然だと無理強いしてくる社会の意識のほうに問題がある!

そうやって勇気を出して、どう考えても無茶な社会の要求を「できない!」と拒否する人が一人、また一人と増えていく事で、歪んでしまった社会の意識は再び健全な形に戻っていくはずです。
どうせ歯を食いしばって耐えるなら、社会に迎合して「ハッピー★ワーキングママ」になろうと苦しむよりも、将来お母さんになる若い世代のために、自分が率先して「ダメ親」になって、身勝手な社会通念や外野の偏見と苦しみながらも戦ったほうがまだ前向きじゃないですか?

「ダメ親」になるのだって、立派な戦いですよ。

次回予告:「イクメン

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