序文：ダメ親のすすめ
私は1978年生まれの男性で、2011年11月生まれの息子と2014年8月生まれの娘がいます。
さて、執筆時点(2016年1月)で、息子が生まれてから早４年強になりますが、この間はおそらくどこの家庭も一緒だと思いますが、まさに嫁と共に戦い続けた日々でした。食事からウンコまで、自力では何一つできない赤ちゃんの世話からスタートし、日に日に成長して自分でできることが増えてくるのは嬉しいんだけど、それが逆に手間になって厄介だったり、しかも意味不明な自己主張を始めるようになって、いよいよ制御不能になってきたり・・・ハッキリ言って、怪獣を室内で飼って、右手で戦いながら左手で育てているようなものでした。
でも、戦いはもう２つありました。
それは、１つはあふれ返る情報との戦い、もう１つは社会の目との戦いです。
育児なんて今まで全く経験がないので、当然不安です。不安だからできるだけ多くの情報を集めて、可能な限り心の準備をしておこうと思います。しかし普通、情報って多く集まってくるうちに何となく全体像が見えてきて、ぼんやりと先の見通しができて徐々に不安が薄れてくるものですが、こと育児に関しては集めれば集めるほど不安になっていきます。
だって育児書って、育児の専門家が書いたっていう割には平気で
・根拠が書かれていない
・理想主義すぎて実践できない
・それなのに、なぜか自信満々で「これが正しい」と断定してくる
という事ばかりだからです。しかも人によって言う事が全くバラバラなので、何を信じたらいいのか全くわからなくなる。育児書って親の負担を軽くするための本であるはずなのに、なぜ読めば読むほど辛くなってくるんだろう？
また、社会の目も冷たいもんだなぁと何度も思い知らされました。
いや、みんな本当に優しいんですよ。次世代を担う赤ちゃんや子供を、立派な大人になるようみんなで正しく育て上げていこう、という根っこの部分の思いは誰もが一緒だというのは感じます。
でも、その「正しい」がなんかずれてるんですよ。
社会が望んでいるのは
「子供を慈しみと愛で包み込み、その一方できちんと叱り躾もきちんとする親と、そんな素晴らしい教育のおかげで礼儀正しく決して悪さもしない、しかも愛嬌もある天使のような子供」
であって、我々がそれを演じている限りは社会も「いいわねぇ子供はかわいらしくて、まさに宝物だね」と歓迎してくれるんですが、一歩裏側をのぞき込むと
・躾のできてねえクソガキとバカ親は許さねえぞ。
・あんなに子供を叱りつけて、この親には愛情が無いのか？虐待？
・文句言うなら、そもそもなんで子供なんて作った？親の責任感が無いのか？
という無言のプレッシャーが社会の雰囲気の中にあります。
全部とは言わないけど一部には確実に。
中でも特に厄介なのは、明らかな悪意をもって来るプレッシャーよりも、むしろ１００％の善意で来るプレッシャーの方です。
「早くしなさいとか、命令ばかりしてると子供がのびのび育たないよ」
「親がしっかりしてないと子供の将来に影響があるから」
「買ったものより、手作りの方が温かみがあっていいね」
この言葉のどこがプレッシャーなの？と思われる方もいるかもしれませんが、私はこういう言葉を聞くと、毎回「ウッ」と真綿で首を絞められるような嫌な気分になります。
善意なだけに心に突き刺さる。正論なだけに言い返せない。そしてその言葉通りにできない自分が辛い。善意なだけに言う側もストッパーが掛からない。そもそも、なぜストッパーが必要なのかすら気付かない。
正論なだけに、追い詰められる。
――そんなわけで、子供が生まれてこのかた、本を読んでもどれが「正しい育て方」なのか一向に分からないし、一方で周囲からは何となく「子供を正しく育てる 正しい親になれ」という無言のプレッシャーがあるし、だいたい３年経ったあたりから、私はいい加減嫌になってきました。そして最終的に
「いい親」って何なんだよ？「ダメ親」って何なんだよ？
親に対する社会の要求水準が高すぎて、こんなの正直ついてけねえよ！
「いい親」なんて単に「社会にとって都合のいい親」ってだけだろ？
無責任な部外者が言う根拠の無い横槍に振り回されるくらいなら、
俺は「ダメ親」でいい！！
という結論に達しました。
このブログでは、育児に関する世の中の言説やコメントがどれほどバカバカしく、一見まともに見えるけど実はいかに狂気に満ちているかについて紹介していきます。
そして、こんな言説くだらねえと一緒に笑い飛ばし、「ダメ親」な私の姿を見ることで、私と同じ子育て中の親御さんたちに少しでも楽な気持ちになってもらえて、気楽な心で伸び伸びと子供と向き合える一助になってくれたらいいな、なんてことを切に願っております。
次回予告：「大切な赤ちゃんのために」
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